レンガ(煉瓦)とは、粘土と岩と水を合わせて練って、型に入れて焼き固めたものをいいます。形は直方体で、色は赤茶色のものが主流です。
レンガは古くから建築やエクステリアなどの材料として使われてきた素材ですが、似た素材としてタイルなどもあります。
この記事では、レンガの説明や特徴、性能別のレンガ(普通れんが・化粧れんが・舗装用れんが・耐火れんが)の紹介、レンガの製法・活用事例、選び方や購入方法などを紹介します。
レンガとは?
レンガ(煉瓦)とは、粘土と頁岩(粘土の堆積岩。薄く剥げやすい性質を持つ)と水を合わせて練って、型に入れて焼き固めたものをいいます。国によってレンガの寸法は異なりますが、日本では日本工業規格(JIS規格)によってレンガの種類がいくつか定められています。
日本工業規格(JIS規格)とは、レンガに限らず日本の産業製品に関する規格などを定めた国家規格のことをいいます。レンガのJIS規格にはいくつか種類がありますが、そのなかで最も一般的なレンガは普通レンガと呼ばれるもので、大きさは210×100×60mmになります。他にも化粧れんが、舗装用れんが、耐火れんがなどがあります。
レンガは建築材料として使われることが多いですが、その歴史は古く、メソポタミア文明の頃から使われていたとされています。日本でレンガが建築材料として使われ始めたのは、江戸時代になってからになります。
レンガとタイルの違い
レンガと似た建築材料として、タイルがあります。レンガにはいくつか種類がありますが、どの種類も主成分は土になります。タイルは焼成温度や吸水率により大きく3種類に分かれ、磁器質タイル・せっ器質タイル・陶器質タイルがあります。
磁器質タイルの主成分は石英や長石・粘土で1250度前後で焼いたタイル、せっ器質タイルは長石や粘土を1200度前後で焼いたタイル、陶器質タイルは陶土や石灰を1000度前後で焼いたタイルになります。
レンガ
タイル
また厚みもタイルの種類によって異なりますが、3~25mm以内のものが多く、主に建築の仕上げ材料として使われることが多いです。このように、レンガとタイルは成分に土が含まれていたり、焼成することで作られるなど似た部分も多いですが、細かな成分・焼成温度・サイズの違いによってレンガとタイルに分かれます。
レンガの特徴・メリットとは?
レンガは、自然素材で耐久性・断熱性が高く、景観性に優れているという特徴があります。
レンガの特徴を理解することで、さまざまなシーンでレンガを活用することができます。レンガの特徴について、より詳しく紹介していきます。
特徴1:自然素材である
レンガは、粘土や頁岩、泥などを原料としており、自然素材であるという特徴があります。
例えば、昨今は住宅を建てる際に使われる建材や接着剤から出るVOC(揮発性有機化合物)がもたらすシックハウス症候群、化学物質過敏症などの健康被害は年々深刻な問題になっています。その点、レンガは自然素材で有害物質を発生させないため、人体に優しい建築材料といえます。
レンガは天然の土を原料としているため、砕くと土に還すことができます。例えば、レンガを建物に使用した場合、何十年後かにその建物を解体することがあったとしても、砕いて再利用できる場合があります。そのため、産業廃棄物として焼却処理にエネルギーを使う機会が少なく、地球環境にも優しい材料といえます。
このように、レンガは自然素材であることから、人体や地球に優しい素材だといえます。
特徴2:断熱性・耐火性がある
レンガは、断熱性・耐火性に優れているという特徴があります。
例えば、建物の外壁にレンガを使用すると、家の中に外の熱を伝えにくく、家の中の熱を外に逃さず溜め込むという機能を果たしてくれます。そのため、家全体の断熱性能の向上を図ることができ、光熱費を抑えられ、省エネ効果を得られます。
また、レンガは、土を焼き固めた素材であり、炭素を含んでいないことから、耐火性に優れています。そのため、レンガは釜や薪ストーブによく使われます。また、レンガを建物に使用すると、内部からの出火の場合は延焼を防ぎ、外部からの火の進入も極力防ぐことができます。
このように、レンガは断熱性・耐火性に優れた素材であるといえます。
特徴3:耐水性・耐久性がある
レンガは、吸水性がとても低いため、耐水性が高く、また耐久性に優れているという特徴があります。
例えば、レンガを建物に使用する場合、コンクリートよりもレンガは吸水率が低いため、高温多湿な日本において湿気にも強い素材として活用できるというメリットがあります。
また、メンテナンスをすることによって品質を維持することは可能ですが、木造在来工法で建てられた建物の寿命は30年程度といわれています。一方、レンガの寿命は100年以上といわれています。ヨーロッパには大昔に建てられたレンガ造りの建築物が無数にありますが、それはレンガの耐久性能によるものだといえます。
このように、レンガには耐水性・耐久性に優れているという特徴があります。
特徴4:景観性が高い
レンガは、自然素材であることから均質的な工業製品と違い、テクスチャーに個体差があり、景観性が高い素材だといえます。
レンガは一般的に、レンガに適した粘土を成形・乾燥・焼成して作られます。その高温で焼き固める工程の中で、土の中に含まれる鉄分が酸化して赤茶色に変化することでレンガ特有の表情に仕上がります。粘土に含まれる鉄分が多いとレンガは赤みを増し、焼成温度によって色の濃淡差やむらが出ます。このようにレンガは、工業材料のようにテクスチャーが均一ではなく、個体差が生じます。
また、レンガは日射、風雨にさらされて、経年変化(エイジング)していき、より表情が増していきます。レンガはテクスチャーに個体差があることや、経年変化を楽しめるという点で景観性が高い素材だといえます。
レンガの種類・名称とは?性能別に4種類のレンガを紹介
レンガは、性能の違いによって種類や名称が異なります。あらかじめレンガの性能別の種類をおさえておくことで、レンガを使用用途に合わせて選ぶことができます。
レンガの主な種類を紹介していきます。
普通れんが:建築・土木・造園など幅広く利用される最も一般的なレンガ
普通れんがとは、JIS(日本工業規格)では、築炉、土木、建築、造園用などに使用されるレンガと定められています。普通れんがは建築・土木・造園など、もっとも一般的に用いられているレンガといえます。粘土中に含まれる酸化鉄の発色によって赤色を呈するため、広く一般には「赤レンガ」と呼ばれることもあります。
JIS(日本工業規格)では普通レンガのサイズは、長さ210mm、幅100mm、厚さ60mmと定められています。またその中で、吸水率・圧縮強度の違いにより、2種・3種・4種に区別されます。
普通レンガの種別
吸水率 | 圧縮強度 | |
---|---|---|
2種 | 15%以下 | 15 N/mm2以上 |
3種 | 13%以下 | 20 N/mm2以上 |
4種 | 10%以下 | 30 N/mm2以上 |
写真のように、普通れんがは建築・土木・造園などに使用されることが多く、もっとも一般的に用いられているレンガといえます。
化粧れんが: 外壁の仕上げで活用されるレンガ
化粧れんがとは、JIS(日本工業規格)では、外断熱工法、れんが積張り(添積み)工法などの非構造の外壁仕上げ工事などに使用されるレンガと定められています。
JIS(日本工業規格)では化粧レンガのサイズは、普通煉瓦と同じで長さ210mm、幅100mm、厚さ60mmと定められています。またその中で、吸水率・圧縮強度の違いにより、a種・b種に区別されます。
化粧レンガの種別
吸水率 | 圧縮強度 | |
---|---|---|
a種 | 20%以下 | 15 N/mm2以上 |
b種 | 9%以下 | 20 N/mm2以上 |
構造に影響しない外壁仕上げ部分に使用する化粧レンガの方が、建物の構造に影響する部分にも使用する普通レンガよりも、若干吸水率の制限が高くまで認められています。
舗装用れんが:エクステリアなど広場の舗装で活用されるレンガ
舗装用レンガとは、JIS(日本工業規格)では、定常的に大型車が走行しない広場などの舗装に使用されるレンガと定められています。舗装用レンガの厚さは、50 mm、60 mm又は80 mmと定められています。
JIS(日本工業規格)では舗装用れんがの性能は、舗装面に使用するため、曲げ強度、透水性及び滑り抵抗性の性能基準が定められています。
そのため舗装用レンガは、雨天時の快適な歩行を維持するための透水性に優れていて、ヒートアイランド現象の抑制につながる保水性も備えています。
耐火れんが:耐火温度が定められているレンガ
耐火レンガは、JIS(日本工業規格)では、標準形れんがと異形れんがの2種類に分かれて形状と寸法が定められています。耐火性が高いことから、主に石窯(ピザ窯)に使われます。耐火レンガの耐火度は「SK〇〇」という表示で示されます。
耐火レンガの耐火度の種類
耐火度 | 荷重軟化点(℃) |
---|---|
SK32 | 1350 |
SK34 | 1420 |
SK35 | 1450 |
SK36 | 1470 |
SK38 | 1580 |
SK40 | 1730 |
耐火レンガは赤レンガとは違い、白っぽい色をしているため、「白レンガ」とも呼ばれます。JIS(日本工業規格)で耐火レンガのサイズは、並形れんがで230mm×114mm×65mmと定められていて、普通レンガよりも大きいのが特徴です。
レンガの製法とは?製法別の特徴と価格・費用感を紹介
レンガには、機械方式による4つの製法があります。ここでは、レンガの製法の説明と各工法の価格についてご紹介していきます。
レンガの製法1:真空押出成形
押出成形とは、練り土状の原料をトコロテンのように押し出して成形する製造方法です。
真空押出成形機の内部のスクリューが回転することにより粘土を混練します。真空室で粘土の空気を完全に抜き、粘土を排出するノズル部の金型を通して板状に押し出されます。押し出された板状の土を、針金を使ってレンガの所定のサイズで切り取っていきます。
こうした製造のプロセスは、原土の粉砕→混錬→押出成形→切断→乾燥→焼成までの数段階に分けた工程が自動制御されています。押出成形は、色や風合いにムラがでるため手づくりのような豊かな表情のレンガを造ることができます。
真空押出成形は最も一般的な工法のため、価格は普通レンガの場合は1個100円程度とリーズナブルなものが多いです。
レンガの製法2:一部押し出し成型後リプレス
一部押し出し成型後リプレスとは、一度真空押出成型したものを再度、高圧力のプレス機で再成型する製法です。代表的なものは瓦です。これは一度板状の真空土練押出成形したものを3次元の形に変えるためリプレスする成型です。
レンガの場合、今はほとんどなくなりましたが、同じように一度押出成形したものをリプレスして視覚障害者用の誘導板(突起を出すため)に加工するときに用いました。
一部押し出し成型後リプレスは、使用する機械が特殊で、受注生産で作られることが多いため、価格が高いものが多いです。
レンガの製法3:泥状の粘土を型押し成型
泥状の粘土を型押し成型とは、機械のなかった昔には型枠に柔らかい粘土を押し込んで成型していたのをそのハンドメイドな仕上がりを残して機械成型した成型方法です。泥状というよりソフトマッド(通常より柔らかくした粘土)を型に押し込み、それを上から少し圧力をかけて成型します。
主にイギリスをはじめヨーロッパで多く作られています。日本のレンガメーカーではこれまでどこもこの製法はしていませんが、今では岡本煉瓦さんがこのプロトタイプにチャレンジされています。それがヴィンテージタイプVINシリーズです。
泥状の粘土を型押し成型は手のかかる工法のため、価格が高いものが多いです。
レンガの製法4:乾式プレス成型
乾式プレス成形とは、乾燥させて粉状にした土を大きな金型に充填し、一気に高圧プレス機で押し固めて成形する製造方法です。
湿式の押出成形の原料の含水率が約20%に対し、乾式プレス成形の原料は7%程度であるため、焼成による収縮率が湿式押出成形では15%程度もあるのに比べ、乾式プレス成形では8%程度以下と小さくできます。
その上、押出成形とは逆に焼成後に切断加工を行うため、寸法精度が安定します。そのため、均一でシャープな形状で安定したクオリティのレンガを量産することができます。耐火煉瓦はこの乾式プレス成形により製造されたレンガになります。
乾式プレス成型は量産できる工法のため、価格がリーズナブルなものが多いです。
具体的なレンガ活用事例
レンガは土木、建築、インテリア、DIYなど幅広いジャンルで活用できる材料ですが、それらの活用事例をご紹介します。
※特記なきかぎり©岡本煉瓦
レンガの選び方や購入方法
レンガの選び方や具体的な購入方法について、参考となるHPやショップなどもあわせてご紹介します。
主要なレンガメーカーのHP:レンガのデザインや特性を大まかに把握できる
レンガを選ぶ時には、まず主要なレンガメーカーのHPを見ることをおすすめします。各社のホームページには、様々なレンガの商品の写真、製法、サイズ、特徴などが説明されてあり、さらにはそのレンガを使った事例写真もあわせて見ることができます。
ここでは、主要なレンガメーカーと、そのメーカーの特徴や各社のサイトの内容についてご紹介します。
主要なレンガメーカー
メーカー名 | 特徴 |
---|---|
国代耐火工業所 | 国内に自社工場を有するセラミック建材メーカー。 焼き物の地である美濃地方の良質な粘土を使用してレンガを製作している。 施工例が多く掲載されており、事務所ビル・文化施設・住宅など様々な用途での実績が紹介されている。 |
織部製陶 | 手仕事にこだわり特注生産するメーカー。 その建物オリジナルの製品をお客様とのやり取りをもとに製作している。 受注から完成までの流れを丁寧に紹介している。 |
ニッタイ工業 | 高品質で豊富なラインナップを持つメーカー。外装や内装、床のタイルを多く扱っている。 材料や製造工程など、タイルができるまでの流れを写真とともに紹介している。 |
國富 | レンガのラインナップが豊富なメーカー。住宅向けから博物館など公共的なものまで幅広く扱っている。 ブログでは意外にもレンガが使われている建物などを紹介している。 |
楽天市場などの通販サイト:汎用的なレンガを安価に購入できる
レンガを選ぶ時や購入する時には、通販サイトを活用する方法もあります。各通販サイトでは、普通レンガをはじめ、様々な種類のレンガが販売されています。
通販サイトから購入するメリットは、重いレンガをネットで注文するだけで、家まで届けてくれることです。また、通販サイトなら送料無料で宅配してくれるところもあります。
ここでは、主要な通販サイトと、そのサイトの特徴や取り扱っているレンガの種類についてご紹介します。
レンガを取り扱う通販サイト
ショップ名 | 特徴 |
---|---|
エクステリアショップセラコア | 専属バイヤーがセレクトしたエクステリア用のタイルやレンガ、石材を主に扱っているサイト。 レンガは、ベーシックなものやアンティークなものを取り扱っている。 施工写真では、実際に購入して使用しているお客さんの写真を多く紹介している。 |
お庭の玉手箱 | 住宅などの庭で、花壇や小道などをつくることのできるレンガを主に扱っているサイト。 型紙に沿って施工することで簡単に庭をデザインできるセットを取り扱っている。 レンガの敷き方をイラストを使って紹介している。 |
モノタロウ | レンガの他にも、工具や消耗品、事務用品など幅広い商品を取り扱っているサイト。 レンガは「建材・エクステリア」内の複数のカテゴリーに掲載されている。 主に10-30個程度のセットで販売されている。 |
レンガ.pro | ホームセンターコメリの通販サイト取扱商品から、レンガに関連する商品のみを扱っているサイト。 敷きレンガや積みレンガなど、多くの種類のレンガを取り扱っている。 レンガの積み方やレンガの割り方などを写真を使って紹介している。 |
ホームセンター:直接レンガを選んで購入できる
レンガを選ぶ時や購入する時には、ホームセンターを活用すると、直接レンガを確認することができます。ホームセンターでレンガを購入するメリットは、実物を見て表情やサイズ、積み方をイメージしながら選べることです。
代表的なホームセンターには、ケーヨーデイツー、コーナン、カインズホームなどがあります。
一般的なレンガは、1個で2.5kg程度あります。購入する数が多いと、運搬が大変になるので注意が必要です。ホームセンターによっては、運搬用に台車や軽トラックを無料で貸し出しをしてくれるので、事前に問合せてからお店に行かれることをおすすめします。
まとめ:レンガの特徴を意識して、レンガを建築やエクステリアに活用しよう
レンガは古くから建築や舗装などの材料として使われてきた素材で、耐久性があり、自然素材であるなどメリットが多い素材です。
レンガの特徴や性能などを理解して、インテリアや舗装などにレンガを取り入れる際のポイントは以下の通りです。
- レンガ(煉瓦)とは、土を主成分として、型に入れて焼き固めた素材のことをいう
- レンガは自然素材で耐久性・断熱性が高く、景観に優れているという特徴がある
- レンガは、寸法やどの場所に使用するかによって種類が分かれる
- レンガは製法によって見た目や価格が異なるので、実物や写真などを確認する必要がある
- レンガを選ぶときは、レンガメーカーのHPなどで写真を確認したり、ホームセンターなどで実物を確認しましょう
ASEI建築設計事務所は、レンガなどの環境素材の開発や環境素材を使用したビル・店舗・個人住宅の設計提案を行っています。環境素材やレンガの製品に関心のある方は、お問合せフォームよりお気軽にご連絡ください。
レンガに関する事例・リンク
EDO brick
ASEI建築設計事務所が開発したレンガ・EDO brickを紹介するページです。EDO brickは関東ロームと三河土を配合し成形したレンガです。EDO brickの詳しい製品情報・写真・施工例などをご覧いただけます。
導入の流れ
デザイン事務所への相談方法やお問合せからサービス提案までのプロセスを紹介しているページです。レンガなどの環境素材に関するご相談、ビル・店舗・個人住宅の設計について相談をする場合に、その方法や費用が発生するタイミングなどを紹介しています。