オーダーキッチンとは、オーダーメイドで作るキッチンを指し、デザイン・サイズ・素材・設備機器などのカスタマイズ性や自由度が高いことが特徴です。
オーダーキッチンは、規格品にはないサイズや素材が選択でき、デザイン性や使い勝手を自由に高められるほか、海外製の食器洗浄機や水栓器具が組み込めるなど、理想やこだわりが実現できます。
この記事では、オーダーキッチンの意味や概要、キッチンの種類と費用、オーダーキッチンの基本用語、オーダーキッチンを取り入れる際のポイント、主要なオーダーキッチンメーカーのリスト、実際のデザイン・導入事例などを紹介しています。
オーダーキッチンとは?
オーダーキッチンとは、オーダーメイドで作るキッチンを指し、デザイン・サイズ・素材・設備機器などのカスタマイズ性や自由度が高いことが特徴です。
オーダーキッチンは、自身のライフスタイルや好み、部屋のインテリア・空間に合わせて自由に計画できます。そのため、家事動線を効率化したい、収納などの使い勝手を高めたい、インテリアへのこだわりを実現したい、海外製のハイスペックな設備機器などを取り入れたい、といった場合におすすめです。
また、この記事では、オーダーメイドのキッチンメーカーに依頼するキッチンのほか、家具職人や工務店などに依頼する造作キッチンもオーダーキッチンに含めて紹介しています。
キッチンの種類・特徴・価格とは?
キッチンの基本的な種類、特徴、価格について紹介します。キッチンの種類は、大きくシステムキッチン・オーダーキッチン・造作キッチンの3つが挙げられ、それぞれの違いを押さえることで最適な依頼先を選択できます。
キッチンの種類と特徴と価格帯のイメージ
種類 | 特徴 | 価格帯 |
---|---|---|
システムキッチン | 設計された規格品や既製品のラインナップから選択する。メーカーが提示するサイズ、素材、設備機器からの 選択が基本となる。 | 50~150万円 |
オーダーキッチン | 大きさや素材などをより自由にカスタマイズできる。特殊な素材や海外製の設備機器なども選択可能。 | 100~500万円 |
造作キッチン | 工務店や家具職人などが依頼先となる。オーダーキッチンの1種と言えるが、カスタマイズ性がより高い点が特徴。 | 50~300万円 |
システムキッチン:規格品・既製品のラインナップから組み立てるキッチン
システムキッチンとは、あらかじめ設計された規格品や既製品のラインナップから、サイズ・素材・設備機器などを選択するキッチンです。
メーカーが提示する商品カタログの中から選択するため、海外メーカーの設備機器や特殊な仕上素材などは使えない場合が多い一方、打合せの手間は少なくなります。
一般的な価格帯は50~150万円程度で、低価格帯のラインナップだけでなく、デザイン性や機能性が高い高級路線のシリーズもあります。
オーダーキッチン:オーダーメイドでサイズや素材を指定できるキッチン
オーダーキッチンは、オーダーメイドで製作するため大きさや素材などをより自由にカスタマイズでき、特殊な素材や海外製の設備機器なども選べるため、オリジナリティの高いデザインが実現します。
メーカーによっては基本となるラインナップや素材の選択肢を用意している場合もあり、各メーカーでカスタマイズの自由度には幅があります。
一般的な価格帯は100~500万円程度で、システムキッチンよりもカスタマイズ性に幅があることから価格も高くなる場合が多いです。
造作キッチン:工務店や家具職人が作るオーダーメイドキッチン
造作キッチンとは、工務店や家具職人などに依頼するオーダーメイドのキッチンを指すことが多いです。オーダーキッチンの1種と言えますが、大きさ、形、素材といった設計の自由度がより高い点が特徴です。
一般的な価格帯は50~300万円程度で、必要最低限の機能で設計することも高級な仕様にすることも可能です。
オーダーキッチンの基本用語・名称
オーダーキッチンの基本となる用語・名称を紹介します。ワークトップ、レンジフードなどのキッチンパーツや、I型キッチン・L型キッチンといったタイプの違いについて、意味や概要を掴んでいただけます。
オーダーキッチンの基本用語・名称と意味
用語・名称 | 意味 |
---|---|
ワークトップ | 調理などの作業を行う天板。ステンレス、人造大理石、天然石、セラミックなど、さまざまな素材が用いられ、 素材ごとに耐久性や見栄えの印象が異なる。 |
ウォールキャビネット(吊り戸棚) | キッチンの壁や天井に設置されている戸棚。キッチン上の天井などに設置することで、空間を有効に活用できる。 木材や金属などさまざまな仕上げ素材を選択できる。 |
フロアキャビネット | キッチンの床やシンク・コンロ下などに設置されている棚。スペースに無駄がなく収納量の多い引き出し式が主流。 木材や金属などさまざまな仕上げ素材を選択できる。 |
コンロ | 鍋などを温める加熱調理機器。ガスを使うガスコンロや電気を使うIHコンロがある。 IHコンロはガスコンロに比べ使える素材に制約があるが、熱効率が良く天板がフラットで掃除などがしやすい。 |
シンク | 流し台の水槽を指す。ステンレス、ホーロー、樹脂などの素材が選択できる。 大きなサイズにしたり、2槽にするといったカスタマイズも可能。 |
水栓 | 水やお湯を出したり止めたりする器具。ハンドルで操作するもの、手をかざすセンサーで操作するものなどがある。 水栓のタイプによって、壁に設置する場合やキッチンに取り付ける場合がある。 |
レンジフード | コンロ上にあり、調理による煙を集め排気する設備機器。排気のタイプによって、 プロペラファンとシロッコファンに分けられる。高機能なものや、デザイン性の高いものなど、さまざまな製品がある。 |
I型キッチン | シンクやコンロが一直線に並ぶレイアウトのキッチン。最も一般的な形で、作業動線が短く調理しやすいことが特徴。 省スペースなのでキッチン家電や棚なども配置しやすい。 |
L型キッチン | シンクやコンロなどがL字型に配置されたキッチン。調理スペースや電子レンジなどの家電類の置き場所を広く取れる ことが特徴。動線が三角形になることから、多人数での調理などにも向いている。 |
アイランドキッチン | 壁に接する部分がなく独立しているキッチン。 開放感があり、周囲とのコミュニケーションが取りやすいといったメリットがある。広い空間に向くスタイル。 |
ペニンシュラキッチン | キッチンの短い辺が壁に接しているスタイル。キッチンが半島(ペニンシュラ)のように壁から突き出している形に なる。リビングやダイニングと対面するため、コミュニケーションが取りやすい。 |
セパレート型キッチン (II型キッチン) | シンクやコンロが分けられ2列に配置されているキッチン。調理スペースや収納スペースを広く取る事ができ、 作業動線も短くなるため調理が効率的になる。 |
オーダーキッチンを取り入れるための4つのポイント
オーダーキッチンを実際に取り入れる上でのメリットやポイントについて紹介します。オーダーキッチンならではのメリットや注意点をおさえることで、理想やこだわりの実現につなげられます。
ポイント1:海外製のハイスペックな設備機器を組み込むなど、キッチンを自由にカスタマイズできる
料理にこだわりがありハイスペックなコンロ・食洗機・オーブンなどを取り入れたい、機能面だけでなくおしゃれなデザインの設備機器を使いたい、といった場合にオーダーキッチンはおすすめです。
オーダーキッチンであれば、通常のシステムキッチンでは組み込めないミーレやガゲナウなどの海外メーカーの設備や製品を組み込めます。例えば、レンジフードや水栓器具のデザインといった、見栄えや印象への影響が大きい部分についてもこだわりが反映できます。
このように、オーダーキッチンは設備機器の選択肢が広がるため、より自身にあったキッチンにカスタマイズすることが可能です。
ポイント2:キッチンを部屋やインテリアと一体的にコーディネートできる
オーダーキッチンはキッチン空間の素材や色の自由度が高いため、リビングやダイニングなどのインテリアと一体的にコーディネートすることが可能です。
一般的な新築住宅では、リビングやダイニングと一体的にキッチンが計画されるケースが多いですが、システムキッチンの場合は限られた素材や色からデザインを決めることになるのでリビングなどのインテリアと一体的にコーディネートをするには限界があります。
オーダーキッチンは、素材や色の選択肢が豊富で、自由に仕上げ材などを指定できるので、リビングやダイニングと溶け込むインテリアとしてキッチンをコーディネートできます。
ポイント3:ライフスタイルに最適な使い勝手のキッチン空間を計画できる
きめ細かく使い勝手を想定し、レイアウトやキッチン収納をカスタマイズしたい場合、オーダーキッチンであれば住まいにぴったりのデザインや収納システムが実現します。
例えば、キッチンカウンターとダイニングテーブルを一体的に計画したり、キャビネットのサイズや使い勝手を希望に合わせて調整できるのは、オーダーキッチンならではの特徴です。
レイアウトや使い勝手にこだわりたい場合、オーダーキッチンであれば自由度が高く住まいにフィットしたデザインが実現します。
ポイント4:オーダーキッチンの設計・施工ができる会社は限られるので注意が必要
オーダーキッチンで、こだわりの設備機器や仕上げの素材、収納のカスタマイズといった計画を実現するためには、キッチンの使い勝手を熟知している設計会社やオーダーキッチンメーカーに依頼することが重要となります。
オーダーキッチンの実績に乏しい設計会社やデザイナーに依頼すると、逆に使い勝手の悪いキッチンになる場合もあるので注意が必要です。さらに、オーダーキッチンの施工経験が少ない施工会社もあるため、施工実績を確認した上で依頼することが重要です。
思わぬトラブルを避けるためには、オーダーキッチンメーカーやオーダーキッチンを得意とするデザイナーに依頼した上で、オーダーキッチン施工の実績のある施工会社を紹介を受けることが安全と言えます。
主要なオーダーキッチンメーカー6社の特徴とメーカーリスト
オーダーキッチンの主要なブランド・メーカーについて、ブランド名、特徴、カタログなどをリストにまとめています。
一覧表のリンクから、各メーカーのラインナップ、事例写真、仕様、ショールームなどを確認できるため、オーダーキッチンメーカーの検討・比較や、各メーカーへの問合せなどに役立てていただけます。
オーダーキッチンメーカーのリスト
ブランド名 | 特徴 | カタログ |
---|---|---|
TOYO KITCHEN (トーヨーキッチン) | 食器メーカーとして創業した国内20拠点と海外1箇所の販売所を持つ総合キッチンメーカー。 ライフスタイルに合わせた8つのキッチンスタイルを提案している。 HPでは、シリーズごとに数多くの事例を紹介している。 | カタログ一覧 |
CUCINA (クチーナ) | オーダー家具の製造販売ブランドとして創業した国内に8拠点を持つ総合キッチンメーカー。 完全受注の国内自社工場一貫生産による高品質な仕上がりが特徴。 HPでは、バーチャルショールーム見学ができる。 | カタログ一覧 |
Euormobil (ユーロモービル) | 高級家具の一大産地であるイタリアヴェネト州で創業し、国内に4拠点を持つ総合キッチンメーカー。 100%イタリア製の高品質なオーダーキッチンを提供しており、 日本のライフスタイルに合わせてカスタマイズすることも可能。 HPでは、ブランド理念やデザイナーについて紹介しており、製品の特色を知ることができる。 | 資料請求ページ |
kitchenhouse (キッチンハウス) | ボイラー会社が前身の国内12拠点、提携店8店舗を持つ総合キッチンメーカー。 キズ、摩耗、汚れ、水、衝撃に強い高機能素材「エバルト」を使用した天板を売りにしている。 HPでは、ブランドコンセプトやプラン、詳細な素材や寸法が載っているカタログを閲覧できる。 | カタログ一覧 |
amstyle (アムスタイル) | 音楽業界出身の創業者による総合キッチンメーカーで、国内に2拠点を持つ。 ピアノ塗装・アルミニウム扉材・突き板を使用したオーダーキッチンを得意とする。 HPでは、様々なテイストの事例写真が紹介されている。 | 資料請求ページ |
松岡製作所 | 金属加工の製造所として創業した国内5拠点を持つ総合キッチンメーカー。 ステンレス加工を得意としており、シンプルで洗練されたデザインが特徴。 HPでは、職人によるオーダーキッチンの製造過程やステンレスのお手入れ方法を紹介している。 | 資料請求ページ |
オーダーキッチンのデザイン・導入事例
オーダーキッチンのデザイン・導入事例について、私たちASEI建築設計事務所が計画・デザインした個人住宅での事例を元に紹介しています。
プロジェクトやオーダーキッチンの概要、デザインのポイント紹介、実際の写真や図面などから、オーダーキッチンや依頼について具体的なイメージを掴んでいただけます。
事例1:LOAM海プロジェクト(トーヨーキッチンを採用)|異なるメーカーの3つの家具を組み合わせ、特徴的な素材で一体感を演出したオーダーキッチン
三浦半島の海辺に建つ10階建てマンションの5階の一室をリノベーションするプロジェクトの一環として、オーダーキッチンを計画しました。お客様の当初からのご意向により、トーヨーキッチンスタイルのオーダーキッチン「BAY Feel Wood」を採用した事例です。
海を望めるキッチン空間を実現するため、キッチンを家の中心に設置し、キッチンカウンターは特徴的な古材風の仕上げとしました。
キッチン背面の収納カウンターと吊り戸棚については、コストパフォーマンスの良い別メーカーの製品を選びつつキッチン本体と近い素材感で仕上げることで、一体感あるキッチンを実現しました。
LOAM海プロジェクトについて、詳しくは事例紹介「LOAM/海|三浦海岸の環境に開かれたインテリア」をご覧ください。
LOAM海プロジェクトにおけるオーダーキッチンのポイント・効果
LOAM海プロジェクトにおけるオーダーキッチンのポイント・効果は以下の通りです。
- シンクにまな板や水切りプレートが設置され、ワークトップを汚さずにシンクで調理が完結できる3Dシンクを採用
- 置いた物との接触面積が少なくなる、ランダムな凹凸テクスチャのステンレスワークトップにより、表面の傷つきにくさと掃除のしやすさを両立
- 薄型のレンジフードでアイランドキッチンでの存在感を抑えつつ、高性能の排気ウィングで煙と臭いの確実な捕集を実現
- キッチンカウンターや背面収納棚の引出し収納は、指1本で開けられ軽く押すだけで半自動で閉まる機構を採用し、調理器具などの出し入れの負担を軽減
- 見た目の圧迫感を軽減しつつ汚れがちな足元の清潔を保ちやすいように、キッチンカウンターに脚を付けて浮かせるデザインを計画
- キャビネットなどはコストパフォーマンスの良い別メーカーの製品を選びつつ、キッチン本体と近い素材感で仕上げることで一体感を演出
事例2:SHIRASUプロジェクト(造作キッチンを採用)|家族のコミュニケーションが生まれやすくなるアイランド型キッチン
鹿児島市の住宅地に建つ新築住宅の設計プロジェクトの一環として、1階のリビングダイニングにオーダーキッチンを計画しました。私たちASEI建築設計事務所がデザインと詳細図の作成を行い、施工者である家具会社さんが製作した造作キッチンの事例です。
お施主さまの、ご夫婦とお子様4人のご家族でなるべく長い時間を一緒に過ごしたいというご要望を実現するため、汚れやすいコンロを壁側にし、シンクをアイランド型にするキッチンレイアウトにしました。
こういった計画やレイアウトによって、奥様は子供たちと対話しながら料理ができ、子供たちはダイニングから配膳のお手伝いができるなど、自然と家族のコミュニケーションが生まれるようなオーダーキッチンを実現しました。
SHIRASUプロジェクトについて、詳しくは事例紹介「SHIRASU|シラスの洞窟のようなエコハウス」をご覧ください。
SHIRASUプロジェクトにおけるオーダーキッチンのポイント・効果
SHIRASUプロジェクトにおけるオーダーキッチンのポイント・効果は以下の通りです。
- 汚れやすいコンロを壁側にし、シンクをアイランド型にすることで、家族と対話しながら料理がしやすい空間を実現
- ダイニングからも食器やカトラリーを取り出せるように、アイランドシンクのダイニング側にも収納棚を設置
- シンク下に市販のゴミ箱を置けるスペースを確保し、ゴミ箱がリビングダイニングから見えないようにデザイン
- ラワン合板に木材保護塗装した仕上材と棚板を用い、収納量を多く設けながらもコストパフォーマンスの良い造作キッチンを実現
- キャビネットの中に設置できるビルトイン引き出しタイプのレンジフードを採用し、見栄えを向上させつつキッチン全体との一体感を実現
まとめ:オーダーキッチンを取り入れるポイントをおさえて、暮らしの質を高めよう
個人住宅のオーダーキッチンで、こだわりや理想を確実に実現したい場合は、オーダーキッチンのデザイン・計画に実績のある設計事務所に相談することも1つの手です。
オーダーキッチンを取り入れ、暮らしの質を高めるためのポイントは以下の通りです。
- オーダーキッチンとは、オーダーメイドで作るキッチンを指し、デザイン・サイズ・素材・設備機器などの自由度が高いことが特徴
- ワークトップやレンジフードといったオーダーキッチンの基本用語をおさえることで、こだわりたいポイントのイメージが掴める
- オーダーキッチンならではのメリットや注意点をおさえることで、こだわりや理想の実現につなげられる
- 主要なオーダーキッチンメーカーリストで比較したり実際に問い合わせることで、具体的な検討が進められる
- 実際のデザイン事例の写真や設計の成果物などを確認することで、依頼する際の具体的なイメージが掴める
ASEI建築設計事務所では、オーダーキッチンデザイン・個人住宅設計の相談をお受けしています。また、開発した環境素材を活用したインテリアデザインや、ビル・店舗の設計提案を行っています。オーダーキッチン・個人住宅の設計、環境素材、レンガ製品に関心のある方は、お問合せフォームよりお気軽にご連絡ください。
オーダーキッチンに関する事例・リンク
レンガの説明や特徴などを紹介しているページです。レンガの特徴などの説明、性能別・製法別のレンガの紹介、レンガの活用事例、選び方や購入方法などを紹介しています。
オーダーキッチンを計画した個人住宅の事例です。オーダーキッチンを部屋の中心に置いてインテリアのアクセントにするとともに、リビングダイニングと一体的に使える使い勝手の良いキッチン空間を実現しました。
導入の流れ
オーダーキッチン・個人住宅などをデザイン事務所へ相談する方法や、お問合せからサービス提案までのプロセスを紹介しているページです。オーダーキッチンの検討・計画に関するご相談、ビル・店舗・個人住宅の設計について相談をする場合に、その方法や費用が発生するタイミングなどを紹介しています。